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風力発電設備を安全に稼働させるための取組み

日本では、台風、落雷、着雪・着氷、地震等の過酷な自然条件の中で、風力発電設備を安全に運転することが求められます。

金沢の風力開発プロフェッショナル集団
リアル・デベロップメント株式会社です。

安全に稼働させるための技術基準

風力発電用設備は、電気事業法の『電気設備の技術基準』及び『発電用風力設備に関する技術基準』により、詳細に要求事項が定義されています。
世界的には、IEC/TC88で審議されており、IEC61400シリーズ国際規格で風力発電システムの規格が発行されています。ここでは、風車本体の設計基準、部品の設計基準、及び性能評価基準などが規定されます。日本もこのIEC規格を基礎として、日本工場規格(JIS)を策定しこれを電気事業法で採用する形となっています。

しかし、日本の自然特性に起因する被害を低減させるためのガイドラインの策定や、風条件の設定と評価方法、台風や乱流対策、避雷設備や表面被覆を含めた落雷対策などを設けることが課題となっており、日本国内においては、国際基準よりも厳しい技術基準を定めることで、安全性の確保に努めています。

風力発電の規格を国際基準よりも厳しく、台風や乱気流に対する安全性を向上蓄電・発電機器(1/2 ページ)

経済産業省は風力発電に関するJIS(日本工業規格)を改正した。これまで国際基準と同様に3段階の風速に対して規定していた風車のクラスに新しい区分を設けて、極限の平均風速が50メートル/秒を超える場所を対象に安全性の規定を追加した。合わせて風車が発する騒音の測定方法も見直した。

出典:スマートジャパン

電気事業法の『電気設備の技術基準』及び『発電用風力設備に関する技術基準』では、風車の構造、風車の安全な状態の確保、タワーの構造耐力、基礎の構造、材料や審査の実施方法等が詳細に定められています。

また、経済産業本省において、定期的に専門家による審査会議が開催され、風力発電設備申請者が具体的な根拠を示し、技術基準に適合していることを専門家に説明し、専門家が提示された根拠の妥当性を検証するという形で審査が行われています。ここで、主な事故事例の共有とこれを踏まえた技術基準の見直しにより、さらに安全性を向上する取組みが行われています。

経済産業省は、『風力発電設備の安全』として、最新情報を公開しています。

2021年5月には、新たに「風力発電所の設置又は変更の工事計画の審査に関する実施要領」が制定されました。

これまで工事計画届出の審査において運用上利用してきた型式認証やウインドファーム認証を、工事計画届出の審査の書類の1つとして審査実施要領中に規定する。というもので、これまでの専門家審査会における第3者機関による認証手続きの中で、事前に確実に確認することで、専門家会議の審査を効率化することを目的としています。

ウィンドファーム認証

ウィンドファーム認証とは、風力発電所を建設するサイトの環境条件の評価を行い、その環境条件に基づいて風車及び支持構造物の強度及び安全性が設計上担保されていることを確認し証明するものです。

一般財団法人 日本海事協会 や、 ビューローベリタス が、製品認証機関として認定されています。

型式認証された風車に関わるウインドファーム認証は、以下の5つのモジュールで構成されます。
1.サイト条件評価
2.設計基準評価
3.全体荷重解析評価
4.サイト固有の風車(RNA)設計評価
5.支持構造物設計評価

サイト条件評価では、風車設置場所における詳細な風況状況を実測データ観測により確認し、その結果をベースに風車の設計条件(設計基準評価及び全体風荷重解析を含む)からタワー荷重をシミュレーションし、支持構造物設計評価(サイト条件評価【地盤/地震条件】、設計基準評価及び全体荷重解析を含む)に関する審査が行われます。

風況観測塔とドップラーライダーによる風の実測

風力発電設備を安全に稼働させるための取組みにおいて、風車の設置場所によって、風の状況はそれぞれ異なるため、年間を通じて、そのエリアでの風の状況を観測することは、風力発電設備設計において、非常に重要な工程です。

近年、陸上風車が大型化しており、風車のハブ高さ(地上から風車中心軸までの高さ)が上昇しています。

ウィンドファーム認証では、タワー高さの3分の2以上の高さの風況計測が必要ですが、法令等の規制により風況観測塔の大型化は容易ではなく、地上高60m未満のものが一般的です。

このため、それより高い位置については風況観測塔の近くにドップラーライダーを併設して風況測定し、風況観測塔のデータを補完する方法が取られています。ウィンドファーム認証では、風況観測塔とドップラーライダー等のリモートセンシングの同時観測が要求されるます。

ドップラーライダーの設置について

ドップラーライダーは、機器から上方へパルスレーザーを出射し、空気中のエアロゾル(微細な粒子)にレーザーが当たり、その反射を読み取ることによって各々の高度の風の強さ・方向等を計測します。レーザー光による測定では、大気の状態にもよりますが、上空約200mまで計測できます。

そのため機器の上方は開けている必要があり、樹木に覆われている場所については伐採が必要となることがあります。また、山中は電力会社の電柱が無い場合が多く、ドップラーライダーの電源が確保できないため太陽光パネル、燃料電池も設置します。

近年の風車の大型化により、ドップラーライダーは今後風況測定に欠かせないものとなりつつあり、特に洋上風力についてはドップラーライダーの活躍の場が広がるであろうと考えられています。

今回は、風力発電設備を安全に稼働させるための取組みにおいて、非常に重要な工程である風の状況測定について、ご紹介させて頂きました。

最後までお読みいただきありがとうございます。

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